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建設現場に女性トイレを

2026.04.30
株式会社サンカクキカク
久留米市
仮設トイレ 現場
株式会社サンカクキカク

「建設現場に女性トイレを」

— 株式会社サンカクキカク / 土木業界の常識を変えた、一人の現場監督の発注ルール改革

静岡県のある建設会社が、全現場に「女性用仮設トイレ」を設置することを義務化した。業界では常識とされていた「現場には男性用のみで十分」という前提を覆した取り組みだ。きっかけは、現場監督の40代女性が入社したことだった。

彼女は入社早々、配属された現場で仮設トイレを開けた時に気づいた。女性用がない。近くのコンビニまで往復20分、現場は山間部で車がないと移動自体が困難だった。彼女は当時の社長に「女性が働けない現場を作っているのは、会社です」と告げた。社長は「業界全体がそうだ」と答えたが、彼女は「だからこそ、変えたら差別化になる」と返した。

社長は試験的に、彼女の管理する現場だけ女性用仮設トイレを設置することを認めた。コストは1現場あたり月3万円の増加。しかしその現場では、女性作業員の応募が従来の3倍に増えた。さらに男性作業員からも「妻や娘に現場の話をすると、女性トイレがあると安心すると言われる」との声が上がった。

彼女は次に、発注ルールそのものを変えた。これまで建設会社は仮設トイレを「業者に丸投げ」していた。業者が標準セットを持ってくるだけで、建設側は中身を確認しないのが常だった。彼女は発注書に「女性用を含む男女共用セット」と明記することを義務化し、納品時の確認項目に追加した。さらにトイレ内の「生理用品設置」「清掃頻度の明示」を条件とした。

業者側からは当初、対応に時間がかかるとの苦情があった。しかし彼女は「対応できない業者は発注しない」と貫いた。結果として、対応業者は清掃品質が向上し、他の建設会社からも受注が増えた。業者の営業担当は「女性用トイレの発注が増えて、清掃のプロ意識が高まった」と語る。

この改革は、建設会社の採用ブランドにも波及した。同社の新卒採用説明会では、女性用仮設トイレの写真がスライドに入るようになった。人事担当者は「説明会後に『女性でも働けるんですね』と声をかけてくれる学生が増えた」と話す。建設業の新卒女性比率は業界平均で3%だが、この会社では8%に達した。

さらに予想外の効果も生まれた。女性用トイレの設置をきっかけに、現場全体の「生活環境基準」が見直された。休憩室の冷暖房、給水設備の水質管理、更衣室の広さ。これらが発注条件に組み込まれるようになり、作業員全体の満足度が向上した。現場の離職率は、業界平均の25%から15%に低下した。

このプロジェクトが他の建設会社に与える示唆は二つある。一つ目は、多様性の取り組みを「コスト」ではなく「投資」として位置づけること。女性用トイレ1基の月額コスト3万円は、1人の熟練作業員を採用・定着させるコストと比べれば微々たるものだ。二つ目は、発注ルールという「日常的な決定」が、業界全体の慣行を変える力を持つことだ。建設会社が求めれば、業者は対応する。変革の起点は、現場の一つの発注書にあった。

彼女は最後にこう話した。「私が女性だから変えたんじゃない。現場に行って、不便だと感じたから変えたんだ。それが女性だっただけの話」。