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廃棄野菜をスナックに

2026.04.03
株式会社サンカクキカク
久留米市
アトツギ 農家 新規事業
株式会社サンカクキカク

「廃棄野菜をスナックに」

— 株式会社サンカクキカク / 食品ロスと地域活性を同時に解く、農家直送のサステナブル事業

熊本県のある農家が、規格外の野菜を使ったスナック製造を始めた。規格外とは、形が不揃いだったり、サイズが基準を外れたりしただけで、味や栄養には全く問題ない野菜のことだ。従来は廃棄されていたこれらを、近隣の食品加工所で乾燥・粉末化し、野菜チップスに加工している。

事業を始めたのは、農家の三代目である30代の男性だ。東京で食品メーカーに勤めた経験を持ち、帰郷後に「自分たちが捨てているものに価値がある」と気づいた。最初は農家仲間からの反応は冷たかった。「規格外の野菜を売るなんて、うちのブランドが傷つく」と言う者もいた。

彼はまず、自社の規格外トマトを使った「ドライトマトチップス」を開発し、地元の観光協会を通じて試験販売した。予想外に売れ行きがよく、3ヶ月で在庫が尽きた。購入者の声を分析すると、「廃棄ものを使っている」という情報がむしろ購入動機になっていたことが分かった。消費者は食品ロス削減に参加している実感を、商品の付加価値として評価していた。

この反応を受け、彼は事業を拡大した。対象をトマトだけでなく、人参やかぼちゃ、さつまいもにも広げた。さらに近隣の他農家から規格外野菜を買い取る仕組みを作り、単なる自社農産物加工から「地域の食品ロス解消プラットフォーム」へと変化させた。

現在は、加工を担う食品加工所も共同出資の形で参加しており、農家、加工所、販売チャネルをつなぐ三角関係が成り立っている。利益配分は農家が4割、加工所が3割、販売と企画が3割という比率だ。農家にとっては廃棄コストが減り、加工所にとっては新たな受注源が生まれる。三方よしの構造だ。

販売チャネルは当初は地元観光店舗のみだったが、現在はECサイトと都内のオーガニック食品店にも展開している。特にECでは「どの農家の、どの畑の野菜か」までトレーサビリティで示しており、消費者と生産者の接点を意識的に作っている。リピート率は45%と、食品ECの平均を大きく上回る。

注目すべきは、この事業が「社会課題解決型」の文脈で語られがちだが、実際の原動力は経済合理性にある点だ。農家にとって廃棄はコストだ。加工所にとって新規受注は収益だ。消費者にとって価値ある商品の安価な購入はメリットだ。誰もが得をするから、持続可能になる。善意だけでは続かない。

このプロジェクトが他の地域に与える示唆は二つある。一つ目は、身近にある「捨てられるもの」に再び目を向けること。二つ目は、単独ではなく地域の異なる事業者を巻き込むことだ。農家一人では規格外野菜の処理能力に限界がある。加工所一人では原料の安定的確保が難しい。販売チャネル一人では商品の独自性が薄い。組み合わせることで初めて事業として成立する。

プロジェクトの代表は最後にこう話した。「うちのチップスは美味しいから売れているんじゃない。買う人が、何かに参加している感覚を持てるから売れている。それを忘れたら、ただの野菜チップスになる」。